撮影を終えてしばらくして、古希を迎えられた奥様から一通のお手紙をいただきました。
そこには、ご主人の二着目の衣装に込められた“真意”が綴られていました。
「ここ数年、コロナ禍で外出が減り、夫の足はすっかり弱ってしまいました。
でも、古希のお祝いに撮影をお願いしたこの機会に、久しぶりにスポーツウェアを着てほしかった。
また運動を始めてもらえるきっかけになればと思って──」
そして最後には、こう締めくくられていました。
「大きな楽しい思い出をありがとうございました」
手紙を読みながら、胸がいっぱいになりました。
私はその時ようやく気づいたのです。
この写真は、奥様にとってただの記念ではなく、ご主人への願いと未来への希望だったのだと。
あの日、ご主人が久しぶりに袖を通したスポーツウェア。
その姿を横で見守る奥様の笑顔。
シャッターを切った瞬間は、ただ「いい表情だな」と思った程度でした。
でも今振り返ると、そこにはもっと深い意味がありました。
それは奥様がご主人を思う愛情の証であり、未来に向けた祈りのような一枚だったのです。
この気づきは、私自身の心を大きく揺さぶりました。
写真は過去を残すもの──ずっとそう信じてきました。
けれど、このご夫婦の姿と奥様の言葉が教えてくれたのは、
写真は未来を変えることもできるということです。
その日から、私は撮影に臨む気持ちが変わりました。
「ただ美しい記念を残す」のではなく、
「その人の人生に寄り添い、未来を少し豊かにできる一枚を撮りたい」
心からそう思うようになったのです。
Studio CarpeDiemの理念は、ここにも表れています。
“Feel the love. Take it with you.”
写真を通じて愛を感じ、その愛を未来に持ち帰る。
一枚の写真が、人の心を動かし、これからの歩みに光を灯す。
あのご夫婦の撮影体験は、その可能性を改めて私に教えてくれました。
