【第4回】二着目の真意と、写真がくれた気づき

撮影を終えてしばらくして、古希を迎えられた奥様から一通のお手紙をいただきました。

そこには、ご主人の二着目の衣装に込められた“真意”が綴られていました。

「ここ数年、コロナ禍で外出が減り、夫の足はすっかり弱ってしまいました。
でも、古希のお祝いに撮影をお願いしたこの機会に、久しぶりにスポーツウェアを着てほしかった。
また運動を始めてもらえるきっかけになればと思って──」

そして最後には、こう締めくくられていました。
「大きな楽しい思い出をありがとうございました」

手紙を読みながら、胸がいっぱいになりました。
私はその時ようやく気づいたのです。

この写真は、奥様にとってただの記念ではなく、ご主人への願いと未来への希望だったのだと。

あの日、ご主人が久しぶりに袖を通したスポーツウェア。
その姿を横で見守る奥様の笑顔。
シャッターを切った瞬間は、ただ「いい表情だな」と思った程度でした。

でも今振り返ると、そこにはもっと深い意味がありました。
それは奥様がご主人を思う愛情の証であり、未来に向けた祈りのような一枚だったのです。

この気づきは、私自身の心を大きく揺さぶりました。
写真は過去を残すもの──ずっとそう信じてきました。

けれど、このご夫婦の姿と奥様の言葉が教えてくれたのは、
写真は未来を変えることもできるということです。

その日から、私は撮影に臨む気持ちが変わりました。
「ただ美しい記念を残す」のではなく、
「その人の人生に寄り添い、未来を少し豊かにできる一枚を撮りたい」
心からそう思うようになったのです。

Studio CarpeDiemの理念は、ここにも表れています。
“Feel the love. Take it with you.”
写真を通じて愛を感じ、その愛を未来に持ち帰る。

一枚の写真が、人の心を動かし、これからの歩みに光を灯す。
あのご夫婦の撮影体験は、その可能性を改めて私に教えてくれました。

撮影を締めくくる、最高の笑顔でした!

【第3回】お客様エピソード:古希のお祝い撮影

スタジオをオープンした年、結婚10周年の記念撮影を依頼してくれたご夫婦がいました。

今では家族ぐるみで仲良くさせてもらっている、大切なお客様です。
そのご夫婦が、ある日「母の古希祝いを撮影してほしい」と声をかけてくれました。

もちろん快諾し、撮影前に打ち合わせを行うことに。
そこで耳にしたのは、お父様(お母様のご主人)のお話でした。

足が悪く、外出も少なく、とても気難しい方だというのです。

お母様も撮影に対して不安を感じている様子でした。
だから私は、こう約束しました。

「必ず楽しい撮影にしますから、安心してください」
迎えた撮影当日。

ご主人にお会いすると、奥様や義理の息子さんが事前に
「気難しい人だから」と強調していた意味がすぐに分かりました(笑)。
けれど、その場にいたスタッフの素晴らしいサポートもあり
撮影は驚くほど順調に進みました。

次第にご主人の表情もやわらぎ、
後半にはその場にいた全員が心から撮影を楽しんでいたのです。
奥様の希望で衣装替えもしました。

足が悪いにも関わらず、ご主人も快く応じてくださり、
無事に二着目の撮影も終えることができました。

正直に言うと、この時点では奥様がなぜ二着目を希望されたのか、
私には分かりませんでした。


「希望に沿って撮影をやり切ること」

──それだけしか頭になかったのです。

数日後。


データを納品してしばらく経った頃、奥様から一通の直筆の手紙が届きました。

そこには、私が想像もしなかった
二着目の本当の理由が綴られていたのです。


──続きは、次回のブログでお話しします。

【第2回】Studio CarpeDiemの理念

Feel the love.Take it with you

母を亡くしたとき、私を支えてくれたのは一枚の写真でした。
その写真を見た瞬間、ただ涙があふれるだけではありませんでした。
母から受け取っていた愛情の深さ、そして感謝の思いが心いっぱいに広がっていったのです。

驚いたのは、私だけではありません。
姉二人も同じ写真を前にして、「これこそ母だ」と声を揃えました。
三人の心が同時に満たされ、悲しみに沈んでいた日々から少しずつ救われていくのを感じました。

「もしかすると、私はこの一枚を残すために写真家になったのではないか」
そう思えるほど、母の写真は大きな意味を持っていました。

母が他界する数ヶ月前、私は目標のひとつだった世界最大規模の国際コンペで一位をいただきました。ラスベガスでの授賞式では皆に祝福されて夢見心地でした。
写真家としてこれ以上ない栄誉です。

けれど、不思議なことにその受賞と母の一枚を比べたとき、天秤にかけることすらできませんでした。
私にとって本当に価値のある写真とは、人の心を救い、愛を呼び起こすもの──それを母の写真が教えてくれたからです。

その体験から生まれたのが、Studio CarpeDiemの理念です。
写真はただの記録ではなく、愛を感じ、未来へ持ち帰るための入り口。

だからこのスタジオのキャッチコピーは、
“Feel the love. Take it with you.”
「愛を感じ、愛を持ち帰ろう」になりました。

ここで撮る写真は、データや作品以上のものです。
それは心を豊かにし、自分や大切な人をもう一度愛せるようにしてくれる。

Studio CarpeDiemは、愛を未来へ届けるためのスタジオです。

次回は、実際の撮影で生まれた「愛を持ち帰る瞬間」をいくつかご紹介します。

もう一度だけ、とは言わず何度でも会いたい。叶わなくても、心の奥深くに締まっていた暖かい気持ちは呼び起こされます。それが写真です。
一枚でも多く、1人でも多く、皆様にとって大切な記録を残せる写真家を目指します。